10年後の未来
つい先日、久しぶりに、ある患者様からお電話を頂きました。
「コルセットが壊れたので、またお願いします」
その患者様は8年前、腰が痛くて通院されていた、当時72歳の女性の方です。
はじめは腰痛と膝痛を併発され、動くのも辛そうでしたが、
約1ヶ月間がんばって治療されたおかげで膝や腰の痛みもなくなり、
日常生活も不自由なく過ごすことができるようになりました。
そこで、これからはストレッチを行って硬くなった関節を
柔らかくしていこうと治療の方針を変えたところ、突然
「痛みが取れたから大丈夫」と治療の中断を希望されました。
「痛みで判断するのではなく、動きを改善しなければまた再発しますよ」と、
ご年齢のことも考慮した上でお伝えしましたが、患者様が
「コルセットがあれば大丈夫」とおっしゃるので、
私も中断せざるを得ませんでした。
それから8年。
コルセットのご購入のため来院された患者様の容姿の変化に
スタッフ一同驚きました。O脚は進行し、腰が90°に曲がり、
手押し車を押しながら頭を一生懸命持ち上げ、
腰、膝だけでなく首までも変形していました。
聞けば、生活もあまり思うように出来ていないとのこと。
ここまでくるともう改善はできません。特に高齢者の方は関節が癒着すると
手技や保存療法ではどうすることもできなくなります。
では手術をすれば良いのでは?と思われがちですが、
ドクターからも嫌がられるのです。体力が落ち、神経圧迫の手術をしても
改善しないのが目に見えていますし、手術失敗のリスクを考えると
手をつける意味がなく、「歳だから仕方ない」とだけ伝えられ、
病院や治療院を転々とすることになります。
私はその患者様に、日常生活動作の安定と進行予防のために
リハビリをお勧めさせていただきました。
患者様は「もう治らないのはわかっているし、病院でも断られた。
私はコルセットでなんとかするから良かよ。なんとか誰にも頼らずに
生活出来とるけんね」とおっしゃり、コルセットを2つ購入され、
帰って行かれました。
私は「患者様が今の現状で良ければ、それはそれで幸せなのかもね」と、
辛そうに手押し車を押す姿を見送りながら呟きました。
もの哀しそうに見つめる森岡の姿も印象的でした。
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コルセットは、痛みの軽減や姿勢の安定という効果はありますが
必ず治療をしながらのコルセット着用をお勧めします。
治療をやめてコルセットのみに頼ると筋肉を弱らせるデメリットもあります。
筋力が衰えてしまっては、筋肉本来の力を発揮できず弱まってしまいます。
あくまでも、身体を正しい位置に治すための補助として使用し
コルセットがなくても身体を正しい使い方ができるようになるのが私の考えです。
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野田雄介